All Night Long, All Night Lone

 

夜明けがいちばん暗いのにどうして人々は夜明けに希望を抱くのだろうか

 

 

 

 

夜明けのすべて、という映画をみた。

 

瀬尾まいこさん原作で、三宅監督の手により映画化された。

 

わたしは主演の松村北斗さんのファンであり、原作のファン。

 

 

 

公開日に、夜8時からのレイトショーへ行った。

 

 

物語は、原作にすごく忠実、というわけではないのに、見終わった後は原作を読み終わった後と全く同じ多幸感だった。

 

物語は、PMSの藤沢さんとパニック障害の山添くんが、2人の関係は恋でも友達でもないけど助け合うことはできる。というような話。

 

 

 

社会では、世の中では目に見えない不調に厳しい。

 

わたしも、19歳のころからPMSが酷くなり、定期的に人とコミュニケーションが取れなくなる。

最中ですら自分でもわかる、今が酷いことを。

 

わたしの場合、バットな期間が1週間くらいだったり、3日だったり、でも毎月決まった日に来るわけじゃなくて、タイミングはバラバラで。本当にこれをPMSで片付けて良いものかはわからないけど、PMSで片付けないと心が持たなかったりする。(自分では双極性障害じゃないかと踏んでいるけど実生活にまだ支障はない、はず)

 

 

映画の中で藤沢さんも山添くんも自分のソレと上手く付き合おうとしている。付き合っている。

 

 

バットに入ると、抜け出すのにすごく時間がかかってしまう。毎回統計をとって、バットに入って抜け出すためのトリガーが何か、次のバットのために記録している。

 

 

大絶賛バットの最中だった。

 

学生時代、いちばん仲が良かった子のことを失望していしまい、でも失望って自分が勝手にしているだけだから相手は何も悪くなくて。

 

学生時代はわたしが彼女の価値観を縛っていたのかな、なんて悲観的になり苦しくて、でもいちばん仲が良かったからこそこんな終わり方はしたくなくて。けど、自分を大切にしてくれない人を自分が大切にする時間もお金もないなと割り切るかしか方法はなくて、しばらくは会えないと連絡したばかりだった。

 

そこからは誰に対しても、何の事象に対してもイライラムカムカして卑屈になって余計なことばかり言っていた。もちろん、なんて言葉で片付けたくはないけど人とコミュニケーションも取りづらくなっていた。

 

 

藤沢さんが映画の中で、「いつもは相手との会話気にしすぎるくらいなのに」と自分のことを悲観していた。共感した。誰にも嫌われたくなくて、みんなから嫌われないなんて無理なのに、相手にどういう態度をしたら好きになってもらえるのか、よりもどういう態度をしたら嫌われないか、を意識してしまうような性分だ。

 

気分が明るいときは何でもないのに、暗いときは帰りのバスでしんどくて泣いてしまうような日もある。

 

そんなバッドな最中にこの映画は公開日を迎えた。

 

元々、公開日に見に行く予定ではあったが、なんて良いタイミングだったのだろうか、なんて思った。

 

 

冒頭の一文。映画の中で藤沢さんが語る言葉のひとつだ。

 

わたしはこの言葉を聞いたときに、確かに考えたこともなかった、でもその疑問をぶつかられれば確かにずっとそうだと思った。

 

 

眠れない夜もあった。起きていたくなくていつもより何時間も早く布団に入る夜もあった。そのどちらの夜にも「明日こそは」と明日の夜明けへの希望と期待を胸にしていた。

 

その疑問に対して、答えは見つからないけれど、これからも、わたしはずっといちばん暗い夜明けへ希望を抱くのだろう。

 

 

 

この物語の素晴らしいところはまだまだある。

 

男女2人が主な登場人物であるのにその2人が恋愛的に結ばれることはない。

 

心地が良かった。

 

男女が出ただけで、何かと恋愛に結び付けられる世の中、ずっとずっと息苦しかった。

 

仲良くしていた同級生に恋人ができたとき、「嫉妬してるんじゃない?」と他の同級生から聞かれたとき、

 

同期とどちらもなく晩御飯にラーメンを食べに行くと何気なく女子会で話すと「えっ、脈アリじゃん」と言われたとき、

 

ずっとずっと言葉に出来ない、言葉にすると会話の相手との空気が悪くなるから言葉にしないようなモヤモヤをずっと抱えていた。

 

男と女ってだけ、ただそれだけで恋愛の相手に決めつけるのは早過ぎる。

 

そのモヤモヤをこの数年ずっと抱えていたから、映画を見終わったあと、監督や主演の2人のインタビューを読んでいて「いかに恋愛的要素をなくすか」という話に、その心遣いに感動した。温かくなった。

 

男と女、子孫を繁栄させるためには必要な記号であるし、その記号からでしか子孫は繁栄させられないけれど、人間、というもう少し大きな記号でくくれば、そこには恋愛など必要なく、

 

「生きにくい世の中を一緒に戦う仲間」

 

であれるのではないかと思う。そうありたい。

 

 

 

藤沢さんにとっての山添くんは、わたしにとってのこの映画だと思う。

 

映画館で見ることが出来るうちに是非沢山の人に見て欲しい。

生きるのが少しだけ簡単になれる気がする。

 

 

 

#夜明けのすべて